硬骨魚類の配偶子形成 調節機構の研究

 雄性配偶子である精子の形成は、幹細胞である精原細胞が増殖して自己を保存 するとともに分化型の精原細胞に分化することに始まります。精原細胞は精母細 胞へ分化し、減数分裂を経て精細胞に分化します。精細胞は、核凝縮やべん毛の形成、残余小体の放出など劇的な形態変化を起こして精子となります。精巣中で 形成された精子は成熟過程を経て受精能を獲得します。

 精子形成過程は、生殖細胞を取り巻く体細胞との精密な相互作用によってコントロールされ、必要な時期に必要な量の精子を産出します。硬骨魚類の精 巣は他の脊椎動物と基本的に同種の細胞によって構成され、基本的な精子形成調節システムを共有すると考えられます。

 当研究室では、メダカを用いて第一精母細胞から受精可能な精子が分化する生 殖細胞培養系、及び精子形成調節機構を保持した精巣器官培養系を開発しました。培養系での精子形成細胞の連続的な分化は下等脊椎動物の特徴の一つであり、これを用いて脊椎動物の精原細胞の増殖・分化調節機構、精子分化調節機 構の解明を目指しています。

精巣から単離したメダカ精母細胞の減数分裂

 

 雌性配偶子である卵は卵原細胞の増殖・分化に始まります。卵原細胞から分化した卵母細胞は減数分裂に入るとともに、成長及び成熟といった卵形成特有の過 程を経て成熟卵になります。硬骨魚類の卵成長過程では卵膜の形成や卵黄タンパク質の蓄積などが起こります。これらの過程は卵巣中で体細胞を介したホルモンなどの作用によって調節されます。当研究室ではメダカ卵巣の発生過程において最初の卵成長の開始機構についてホルモンや細胞成長因子を用いて研究を行って います。

 メダカは、古くから生殖細胞の分化及び性転換の誘導に関する研究が多くなされてきました。昨今、配偶子形成に及ぼす環境の影響が深刻に取りざたされていますが、当研究室では環境が配偶子形成調節に及ぼす影響についても関心を持って研究を進めています。

 

 

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